企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人 しろい環境塾(団体のウェブサイト

都心から電車で40分ほど離れた千葉県白井市は、千葉ニュータウンの一角として、約30年前から開発されてきた。開発に伴い人口が急増。2001年に町から市に移行した。その過程で多くの山林が新興住宅街などに取って代わられたものの、今現在も面積の約6割が緑豊かな里山である。理事長の増木さん、メンバーの坪井さん、山本さんにお話を伺った。

堅実な活動

白井市では近年、農家の高齢化や後継者不足が原因で、田畑の休耕地化や雑木林の放置化が進み、そこへゴミや廃棄物の不法投棄がされるなど里山の環境の悪化が問題となっている。このような背景をもとに、「NPO法人しろい環境塾」はその限られた里山を次世代に引き継ぐべく『里山を生かしたまちづくり』をメインテーマに活動している。
しろい環境塾は、市が主催した講座で出会った有志が中心となり、2000年に設立された。会員のほとんどがニュータウン開発時に移り住んできた「よそ者」で、当初はフィールドも地元の人からの信頼もなかったという。そこで、市内の環境観察やごみ拾いの活動を地道に行い、「しろいごみマップ(市内のポイ捨て等の状況報告)」作成を市から委託されるなど実績をあげ、足場を固めてきた。また、最初に地元の人が貸してくれたフィールドで、まず一年きっちり里山整備に取り組み、成果をあげられるよう、最大限努力した。その結果、徐々に地元の人の理解を得られるようになり、現在は市有地のような公共の土地のだけでなく、個人の私有地をもフィールドに加えて活動を展開している。
地権者、行政、市民が手を取り合って、連携協力する道を着実に歩んでいるといえる。
「平塚の里」の風景

里山を生かしたまちづくり

現在の主な活動のひとつに里山保全事業が挙げられる。市内11ヶ所、総面積6.8haをフィールドとして樹林地の手入れをし、その際大量に発生する間伐材の有効活用として炭焼きに取り組み、その販売収益は活動資金の一助になっている。里山保全事業の中心地である「平塚の里」で、毎週3回行われている「会員作業」には、月に一回予定表を配るだけで好きな時に活動に参加すればよい、というシンプルかつ強制力のないスタイルであるにもかかわらず、毎回10人以上の参加があるという。
また、高齢農家の支援等をする農業支援事業では、専門家を招いての農業技術指導を受けるなど、農業改良普及センター、白井市農政課、地権者との協働での運動を広げ耕作放棄地を生産緑地に変えること目指している。 その他、環境講座・講習会等の開催や、子どもへの環境 教育の推進、近隣駅構内での写真パネル展、他団体と協働で環境フォーラム等を開催するなど、その活動は多岐にわたっている。

退職後の楽園

平塚の里での「会員作業」を見学することができた。しろい環境塾の会員の平均年齢は60代後半。退職後の方たちが多いそうだが、みなさん若くてイキイキされている。「あの人もこの人も70歳過ぎ」という言葉が衝撃的ですらあった。適度に間伐された林の中に廃材を利用したテーブルと椅子が置かれていた。炭焼き窯も焚き火用の竈も、井戸を利用した水場も、地元の業者さんに手伝ってもらいながら自作されたもの。倉庫として使われているのは処分される保冷車の荷台をもらってきたそうだ。木漏れ日の中、実に心地良い空間が広がっていた。
目の前に大きなザルで出されたそうめんをいただきながら、休憩中の皆さんとも話ができた。
「活動の中で大変だと感じることは何ですか?」と質問してみた。作業も重労働の上、活動日が多いことを負担に感じる時もあるのではと思ったのだが、「大変なことなんてない。大変なら来なきゃいいんだから」と一刀両断。都合のつく時に参加すればいいという雰囲気が苦労を感じさせずに活動を続けることの秘訣だ。
多くの里山保全のボランティアグループでは、「若い人の力」を望む声をよく聞く。そのことについは、「どうせ続かないし」と、さっぱりと返された。「無理に若者を求めるよりも、現状でできることをやる」という前向きな姿勢が垣間見える。大義名分をひけらかすことなく「自分の健康のためにやってんだよ」と言い切ってしまう清々しさも小気味良い。
「服を泥だらけにするだけでお金を稼いでくるわけでもなく、奥さんに白い目で見られている」と冗談交じりに話される笑顔に、一歩ずつ堅実に、気負わず自然体で築き上げた和気あいあいとした雰囲気を感じた。
作業の合間の談笑も楽しい
活動に参加して-執筆担当:永島萌 武蔵工業大学環境情報学部環境情報学科到着した現場では、既に作業がスタートしており、最初にやらせてもらったのは炭焼きの窯出し作業。できた炭は銀色にきらめき、炭同士をぶつければ金属音を奏でる上等な代物が出来上がったようである。
次に体験したのは竹の間伐作業である。切り倒された竹の枝葉を落とし、決められた長さに切って決められた場所に運ばれる。この竹材が最後に先ほどの竹炭へと変わるのである。また、落とされた竹の枝葉は、エンジンの轟音の中、チッパーにかけて粉砕するのだ。
これらの作業を経験した後、お昼の休憩となった。作業を中断して集まってきたのは20名もの参加者。土曜とはいえこれだけの人が参加していることに驚いた。各人で昼食を済ませると、自然と焚き火を囲んだ"輪"になっていった。寒い季節だからこそ焚き火を中心に人が集まり、そこでは滅多に聞くことのできない貴重な話や体験を聞くことができた。
飾らず、強要されるでもなく、あくまで自分のペースでこなすことができ、また語らいの場所がある、1つのコミュニケーションの成功形態がここにはあるのだろうと感じた。しろい環境塾の一番の魅力は、この"輪"の中にあるのだろう・・・そう感じとった一日であった。
炭焼き窯から炭を出す。釜もメンバーの手作り。