企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

北の里山の会

 北海道札幌市。真駒内駅から車で20分ほどの距離にある、通称「有明の森」が活動のフィールドである。北の里山の会は2000年に、「おくいずみ都市環境緑地(札幌市所有の森林)」において、市民による森林管理のテストケースを担うべく発足した。
 5.5haと広大な敷地には、カラマツ林や広葉樹林が広がっている。活動内容は、基本の除伐や間伐、林床の笹刈り、森のランチタイムなどの他に、他団体との協力関係の構築がある。

森で勇躍する大人たち

 1988年の「札幌市緑の保全と創出に関する条例」の改正検討があった際に、札幌市の近郊林をどうするか考えるワークショップが幾度も開催された。そこでの活動メンバーを中心として設立したのが、北の里山の会(以下、北の里山)である。
 主な活動内容は、笹刈りや除伐・間伐などである。活動のフィールドが広いため、定期的に活動していても、すぐに笹が生い茂るなどして荒れてきてしまう。毎回集まっては、各々が大鎌やチェーンソーを持って、大量の笹や倒木たちと格闘する。
 有明の森は汗水を垂らして格闘する場所である一方、白樺、サクラをはじめ、カエデなど、各所に目を遣れば、そこには思わず目を留めてしまうような植物が息づいている、憩いの場所でもある。
 定期的に林床管理や除伐を行うことが活動のメインだが、それだけを黙々と行うだけでは会員の士気が下がる。活動に活気をもたらすため、それぞれが食材を持ち寄っての、バーベキュー形式での食事会が毎回開かれている。昼食会では、アットホームな雰囲気の中、冗談を交えながら会話も弾む。昼食会には会員を惹き寄せる求心力がある、という点には全会一致で賛成してしまうようだ。
以前は笹だらけだった有明の森の入口

日向ばかりを、歩んできたわけではなく

 そのような和やかな雰囲気で10年以上存続してきた北の里山ではあるが、所有者である札幌市とは必ずしも足並みが揃ってきたわけではない。
 公共緑地を利用するということは、私有地ではないので当然のことながらさまざまな制約がつきまとう。たとえば、物置などの建造物を建てることができない(これは都市計画法上の制約)ことや、ちょっとしたピザ窯などをつくるにしても「占有」にあたってしまうためにこれも難しい。いわゆる「利便施設」をつくりながら活動することは困難なわけである。
 また、「森林の管理」の方向性も異なるようである。北の里山側は森林を心地よく利用するためには広葉樹林であっても適度な間引きが必要だと考えているが、札幌市側は間引きは基本的に人工林での作業として捉えている。
 森林の利用や管理の方向性について、利用する側と所有する側とで食い違いが生じている。札幌市と意見交換の場を増やしながら、この溝を少しでも埋めていきたいと北の里山では考えている。
活動場所で説明をしてくださった孫田さん(右奥)

なによりも、活動の「継続」を

 会長の孫田敏氏がおっしゃるには、「私たちの団体は10年近くも活動すると参加人数も減少しており、団体全体のモチベーションまでも低下してしまっている。」という。参加者が少ない理由は、会員のほとんどが職業人であるので、なかなか活動に参加する時間が取れないためだ。孫田氏など中心メンバー自身も、みな平日は仕事に勤しんでいる。
 この「停滞期」をどう乗り切っていくか。孫田氏は、今はとにかく活動の「継続」が重要だと考えている。「無理に人を増やしても、その活動に深く共感してくれたり、自ら何らかの意義を感じてくれなければ、結局みな辞めていってしまう。だから、みなにとって魅力的であるような活動を続けていき、その中で活動に心惹かれ、自然と北の里山に定着してくれる者が現れてくれればいい。」と孫田氏はおっしゃっており、活動を続けていくことで、意欲的で北の里山にフィットした会員を集めていきたいと考えている。
活動に参加して-執筆担当:金子健次(一橋大学商学部商学科) 「北の里山の会」の特徴を一言で表すと、「多様性」だ。「有明の森」の植物の171種という多様性もさることながら、「北の里山の会」会員の個性もバラエティに富んでいる。個性の強さが対立するでもなく、不思議とそれぞれのカラーが共存している。
 北の里山としての目標に向かってまい進する、といったスタンスではない。しかし、「活動の楽しさ」が強烈なファクターになって、札幌市各地から吸い寄せられるようにメンバーが集まる。「楽しい」という原動力の前には、方針や志といったロジックは霞んでしまうようだ。
 私はこの取材活動を通して、自然環境を理解するには、活動現場の困難さや共同作業の素晴らしさなど、生の情報に触れることが極めて重要なことに気付いた。この記事をご覧になってくださっている皆さんも、是非「北の里山の会」の活動に参加することで、自然環境の理解に、自分なりの切り口を見つけて来てはいかがでしょうか。
学生レポーターの金子(左)と孫田さん(右)