NPOに関するQ&A

NPO法とNPO税制に関する基礎知識の答え

Q2-01

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NPO法ってどんな法律?
正式な名称を特定非営利活動促進法といい、民法34条(社団法人や財団法人などの公益法人を規定)の特別法として1998年3月に成立し、同年12月に施行されました。特定非営利活動を行うことを主たる目的とした団体に、所轄庁の認証によってNPO法人(正式には特定非営利活動法人)という法人格を付与するのが、その主な内容です。その後2002年12月に改正され、特定非営利活動の分野が12から17に増えるとともに、法人申請手続きが少し簡略化されました。改正法は2003年5月から施行されています。

Q2-02

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NPO法はなぜできたの?
これまで、営利を目的としない団体が法人格を持つ場合には、民法34条に定められた社団法人や財団法人などの公益法人になるのが一般的でした。しかし公益法人になるには、その活動内容が主務官庁の縦割りによって制限され、また財産などの設立要件が厳しいため、多くの市民活動団体が利用するには相応しくありませんでした。そのため、多くの団体は法人格のない任意団体のままであったり、特に営利を目的としないにもかかわらず株式会社や有限会社になったりしてきました。そこで、営利を目的としないことをはっきりさせ、しかも官庁による制約をできるだけ排除した自由度の高い非営利法人制度の必要性が、1990年頃から市民団体の間で訴えられるようになってきました。このような背景のもと、1995年の阪神・淡路大震災の後、国会議員や市民団体が協力して立法活動が具体化し、最終的には全会一致でNPO法が実現したのです。
NPO法のもともとの名称は市民活動促進法といい、実際にこの名称で一度は衆議院を通過したのですが、参議院での議論の中で現在の特定非営利活動促進法という名称に変わりました。しかし法自体は、市民活動団体が活用することを想定した内容になっています。

Q2-03

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どんな団体にも法人格が必要なの?
法人格は、団体が組織として不動産などの資産を保有したり、行政や企業などの法人と契約をするときに必要になるものです。法人格のない任意団体のままでも、資産を保有し契約を結ぶことは可能ですが、その場合は代表者個人の名で行うことになりますから、代表者に大きな負担がかかったり、代表者が交代するときに不便が生じたりします。ですから、そのような団体は法人格を持つほうがよいでしょう。しかし、現在も将来もそのようなことを必要としない団体には、法人格は必要ありません。法人格のメリットやデメリットについてよく聞かれますが、それは個々の団体の性格によって異なります。常勤者のいない小さな団体では、法人化に伴う事務が大きな負担になってデメリットと考えられることも、多額の金銭を扱う大きな団体の場合は、そのような事務を行うことによって事務処理能力や経営能力が身につき、社会的な信用も得られるというメリットにつながります。
なお法人化する場合も、NPO法人だけに限らず、いろいろな法人格の選択肢が考えられます。一定の資本金があって非営利ということにこだわらなければ株式会社や有限会社のような形もありますし、厳しい要件を満たしていて主務官庁の監督にも馴染みやすければ、社団法人や財団法人になることも可能です。社会福祉法人、学校法人、医療法人、生活協同組合、中間法人なども含めて、それぞれの団体の特徴を考えながら、その団体にとって最もふさわしい法人格を検討するとよいでしょう。

Q2-04

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NPO法人を設立するにはどうすればいいの?
NPO法人を設立するためには、一定の書類を揃えて所轄庁に申請する必要があります。所轄庁は、その団体の活動分野や活動地域とは関係なく、団体の事務所の所在地によって決まります。事務所が一つの都道府県にあればその都道府県の知事が、二つ以上の都道府県にあれば内閣総理大臣が所轄庁になります。所轄庁としての都道府県の業務は自治事務(法成立時は団体委任事務)となっており、各都道府県の条例によってその手続きを定めることになっています。NPO法人を設立する場合には、まず各都道府県や内閣府のNPO法人認証担当窓口に問い合わせ、法人設立のためのガイドブックや手引書を入手しましょう。所轄庁では事前相談も受け付けていますので、それを活用するのもよいでしょう。なお、民間からもさまざまなハンドブックや解説書がでていますので、それらを参考にすることもお勧めします。
NPO法人の設立手順が理解でき、実際に設立することになったら、設立総会を開催します。この総会で、具体的な法人の内容を決定し、設立時の役員を決め、定款などの設立申請に必要な書類の承認を得ます。
申請に必要な書類を揃えて所轄庁に提出すると、所轄庁は提出された書類を受理された日から2ヶ月間一般の縦覧に付します。並行して認証要件を満たしているかどうか審査し、縦覧が終わった後2ヶ月以内に認証または不認証の決定をし、文書で申請者に知らせます。
なお、設立にあたっては、資本金や基本財産などの当初資金は必要としません。

Q2-05

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NPO法人になるための条件は?
NPO法人になれる団体は、QII-06の特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の要件を満たすことが必要です。
  • 1.営利を目的としないこと(利益があがってもそれを構成員で分配せず、また解散時にはその財産を国等に寄付する)
  • 2.社員(総会で議決権を持つ正会員のこと)の資格の得喪(入会したり退会すること)に関して、不当な条件を付さないこと
  • 3.10人以上の社員がいること
  • 4.役員として3人以上の理事と1人以上の監事がいること
  • 5.役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること
  • 6.宗教活動や政治活動を主たる目的にしないこと
  • 7.特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと
  • 8.暴力団でないこと、暴力団又は暴力団員の統制の下にある団体でないこと

Q2-06

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特定非営利活動ってなに?
特定非営利活動とは、次の17分野の活動で不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものを言います。(12~16および4の「学術」は、2002年12月の改正によってつけ加わったもの)
  • 1.保健・医療又は福祉の増進を図る活動
  • 2.社会教育の推進を図る活動
  • 3.まちづくりの推進を図る活動
  • 4.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  • 5.環境の保全を図る活動
  • 6.災害救援活動
  • 7.地域安全活動
  • 8.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  • 9.国際協力の活動
  • 10.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  • 11.子どもの健全育成を図る活動
  • 12.情報社会の発展を図る活動
  • 13.科学技術の振興を図る活動
  • 14.経済活動の活性化を図る活動
  • 15.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  • 16.消費者の保護を図る活動
  • 17.これらの各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動

Q2-07

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NPO法人は特定非営利活動以外はやってはいけないの?
NPO法人は、特定非営利活動を行うことを主たる目的としなければいけませんが、定款の定めによって「その他の事業」を行うこともできます。その場合には、会計を特定非営利活動の事業と区分しなければなりません。「その他の事業」には、収益を目的とした事業を含むこともできます。しかし「その他の事業」は、その団体のミッション(社会的使命)の実現にとって必要不可欠なものに限って行うのがよいと思います。

Q2-08

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NPO法人の設立後にしなければならないことは?
所轄庁から認証がおりれば、2週間以内に主たる事務所の所在地で登記をしなければなりません。従たる事務所がある場合には、さらにその後2週間以内に、それぞれの事務所の所在地で登記をします。登記事項や登記に必要な書類等については、管轄の法務局にお問い合わせください。
従業員を雇う場合には、一般企業と同様、就業関係の手続きを行うとともに、労災保険は労働基準監督署で、雇用保険は公共職業安定所で、健康保険や厚生年金保険は社会保険事務所で、それぞれの届出をする必要があります。
税法上の収益事業(33業種)を行う場合には、管轄の税務署にその届けをし、その所得に対して、法人税を納めなければなりません。また収益事業の有無にかかわらず、都道府県や市町村には法人住民税(均等割り)を納めることになっています。しかし多くの自治体には、収益事業を行わないなどの一定の条件のもとにこれを免除する規定がありますので、よく確認してください。
NPO法人は、設立後毎年、事業報告書や収支計算書などを所轄庁に提出して情報公開をしなければなりません。

Q2-09

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NPO法人の情報公開は必要なの?
NPO法は、法人制度で初めて情報公開を規定した点でも画期的でした。これまでの法人制度では、役所が事業計画・事業報告や予算・決算を監督するという建前から、情報公開については規定していませんでした。しかしNPO法人については、役所の監督よりも市民の監視を重視するという観点から、情報公開について詳しい規定を設けています。
情報公開としては、二つの方法が義務付けられています。一つは、毎年年度終了後3ヶ月以内に、QII-10 に示す書類を所轄庁に提出し、所轄庁はこれを一般の閲覧に供するというものです。内閣総理大臣が所轄庁となっている場合には、内閣府で閲覧できるとともに、それぞれの事務所の所在する都道府県においても閲覧できるようになっています。二つ目の情報公開の方法は、所轄庁に提出した書類の写しを各NPO法人の事務所に備えおき、利害関係者から請求があれば閲覧に供するというものです。
法律的にはこのような情報公開が義務づけられていますが、一般にはなかなか利用しにくいのが現状です。そのため、より多くの人がより簡便に利用できる情報公開の方法が必要と考え、日本NPOセンターはこのウェブサイト「NPOヒロバ」を開設することにしたのです。このサイトに寄せられるNPO法人の情報公開は、必ずしも未だ十分なものとは言えませんが、今後さらに多くのNPO法人が詳しい情報を提供することによって、より充実した情報公開が進展することと思います。

Q2-10

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情報公開しなければならない書類は?
QII-09で説明した情報公開が義務付けられている書類は、次のとおりです。
  • ・事業報告書
  • ・財産目録
  • ・貸借対照表
  • ・収支計算書
  • ・役員名簿(前事業年度において役員であったことがある者全員の住所、氏名、報酬の有無を記載したもの)
  • ・社員名簿(前事業年度において社員であった者で10人以上の者の住所又は居所を記載したもの)
上記の他に、記載事項の変更があった場合には定款、認証、登記書類(いずれも写し)が必要となります。これらの書類も所轄庁で一般に閲覧されます。

Q2-11

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NPO法人も税金を納めるの?
法人になると、一定の納税の義務が課せられます。ここでは一部のみ簡単に説明しますので、詳細は専門家にご相談ください。
国税である法人税については、原則非課税となっていますが、法人税法に規定された収益事業(33業種)を行う場合には、その収益事業からの所得に対して、企業と同じ税率で法人税を納めなければなりません。
地方税については、この収益事業からの所得に対して課税される他、収益事業の有無や所得の有無にかかわらず住民税の均等割り(都道府県と市町村を合わせて 7万円/年)が課せられます。しかし多くの自治体では、法人税法上の収益事業を行わないなどの一定の条件のもとに、これを免除する規定を定めています。
税制上の手続きは、国税なら税務署に、地方税なら都道府県税事務所に必要書類を提出して行います。

Q2-12

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法人税法上の収益事業ってなに?
法人税法施行令第5条に定められた下記の33業種の事業で、継続して事業場を設けて営まれるものをいいます。
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、貸席業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊戯所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産の提供業
これらの事業をNPO法人が行う場合には、たとえそれがNPO法における17分野の事業であっても、法人税の課税対象になります。自治体からの委託事業は請負業に、介護保険事業は医療保健業に該当します。NPO法人の行う事業は、ほとんどこの33 業種に含まれるようですが、セミナーの開催や印刷物の有料頒布などの一時的に行う事業は該当しません。

Q2-13

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NPO法人に寄付をすると税が優遇されるの?
個人や企業がNPO法人に寄付をしても、税制上の優遇措置はありません。しかし国税庁長官によって認定NPO法人(法人格)となった団体に寄付をすると、次のような税優遇があります(QII-14参照。詳しい算定式などについては専門書か税務署の資料を参照)。
  • (1)個人が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた所得控除が得られる。
  • (2)企業が寄付した場合、一定限度内で寄付金額に応じた損金算入(経費処理)が認められる。
  • (3)個人が相続財産を寄付した場合、その寄付分が課税対象外になる。
  • (4)当該認定NPO法人がその収益事業所得を非収益事業に充てた場合(みなし寄付という)、一定限度内でその金額に応じた損金算入が認められる。
この制度は2001年10月から実施され、2003年4月に改正されました。改正によって認定要件の緩和や(4)項の追加がおこなわれましたが、実際には未だ認定要件が非常に厳しく、しかも提出資料が煩雑なため、極めてわずかの法人しか認定を受けていません(2003年12月1日現在18法人)。

Q2-14

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認定NPO法人になるための条件は?
基本的な要件は「総収入金額等」に占める「寄付金総額等」の割合が5分の1以上ということです。この場合の「総収入金額等」と「寄付金総額等」の算出には次のような条件が伴います。
  • ・1寄付者(個人や企業や団体)の寄付額が全体の寄付額の5%を超える部分は「寄付金総額等」に算入しない(→まとまった大口寄付よりも多くの小口寄付が有利)
  • ・国や地方自治体あるいは日本が加盟している国際機関からの委託事業収入は「総収入金額」から差し引くことができる(→公的な委託事業をしているほうが有利)
  • ・国や地方自治体あるいは日本が加盟している国際機関からの補助金や1寄付者からの1000円未満の寄付は、「総収入金額」にも「寄付金総額」にも含めない
このような基準は、多くの人や企業から支えられている団体ほど公益性が高いというアメリカの税制優遇の考えに基づくもので、パブリック・サポート・テストと呼ばれています。この他の詳しい要件については、解説書や税務署で調べてください。

Q2-15

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NPO法人と公益法人の税制上のちがいは?
原則非課税という点は公益法人(財団法人・社団法人)もNPO法人と同じですが、さらに、収益事業への課税において所得の20%までの範囲で「みなし寄付」が認められること、法人税には軽減税率が適用されること、預金金利などの金融収益も非課税になっていること、などの点において公益法人のほうが優遇されています。なお社会福祉法人の場合は、みなし寄付の範囲が50%と大きく、また寄付税制においても認定NPO法人とほぼ同じ扱いがなされるなど、公益法人よりもさらに優遇されています。社会福祉法人はまた、介護保険を含む医療保険業が特例によって収益事業とされず非課税になっている点でも優位にあります。