企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

長池里山クラブ(団体のウェブサイト

東京の西に位置する多摩ニュータウン。これは八王子市・多摩市・町田市などに広がる自然豊かな多摩丘陵を切り開いて作られた、日本屈指の大規模ニュータウンだ。スタジオジブリの映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の舞台になっていることでも有名である。そのおしゃれな住宅街の一角に、ふと緑豊かな公園が現れる。そこは、多摩丘陵の原型地が最も保全されている場所、八王子市長池公園。その公園の里山ゾーンで1998年から活動をしているのが、長池里山クラブだ。

長池里山クラブの特徴

長池里山クラブ(以下、クラブ)の発足は、1998年に住宅・都市整備公団(現都市再生機構)が長池公園整備の一環として、公園の自然環境の保全、住民コミュニティの形成、里山文化の育成・継承を目的に参加者募集を行ったことがきっかけだ。2001年以降はクラブの運営は公団の手を離れ、住民たちに委ねられている。会員は、長池公園の近隣住民が子どもに自然体験をさせるために家族ぐるみで参加する場合が多く、2006年6月の時点で会員203名のうち家族数は81組もあった。活動への参加がご近所のネットワーク作りにもなっているようだ。またスタッフは40代の男性も多く、まだ現役で仕事をされている方も多い。
 また長池公園には、FUSION長池というNPOが存在する。FUSION長池は長池公園の指定管理者であり、公園で活動しているクラブの監督責任を持ち、活動支援を行っている。具体的にはクラブと、市・市民・福祉団体・学校などの間に立ち連絡を管理することで、活動をより自由で地域に開かれたものにしているのだ。つまりクラブは、市やFUSION長池のバックアップのもと、雑木林の復元・保全活動、田んぼ・畑の管理・利用、炭焼き、里山体験活動など多岐にわたる活動を、より円滑に行っているのである。
長池里山クラブの活動場所。

楽しむための共生

「やっぱり共生ということかな。」今回話を伺ったクラブ事務局長の赤羽誠さんは、話の中で何度もこうおっしゃった。彼らの活動の中には、随所にたくさんの「共生」が溢れている。公団・八王子市・FUSION長池とクラブの共生、多様な観念や興味を持つスタッフ同士の共生、指示し手助けをするスタッフと会員の共生、その中でも様々な年代・性別の共生、活動と近隣住民の共生・・・。これらは全て、それぞれが活動を楽しむことを目的とした共生であると赤羽さんは言う。だからこそ、意見が食い違っても最大限議論し認め合いながら、ここまで道を切り開いてこれたのだろう。
また活動への動機は、環境保護への使命感よりも「楽しくて好きだから」という気持ちが強いという。固く構え過ぎないからこそ活動が続き、それが結果的に環境保護につながるのだ。実際赤羽さんご自身も、自主的に長野県で山仕事の修行をするほど雑木林を再生させる作業に夢中だし、他のスタッフの方々も、それぞれに自分が好きな楽しめる活動に率先して取り組んでいるそうだ。活動の参加者においても、活動の合間に山を駆け回って遊ぶ子どもたちの姿や、雑談を楽しむ親たちの姿が見られた。このように、活動場面の随所にこの「楽しくて好きだから共生できる」という気持ちが溢れており、このことが何者をも阻害せずに暖かく受け止める、自由で開放的な雰囲気をつくりだしているのだろう。

活動を広げていくために

活動の継続と更なる発展のためには、クラブの活動を近隣住民にもっと理解して興味を持ってもらうことが急務である。これは会員・活動への参加者の減少、スタッフの人手不足を補うためにはもちろんだが、炭焼きの際の煙を好まない近隣住民との関係づくりをしていくためでもある。活動を知らない住民に煙を火事と勘違いされ、消防署に通報されたこともあったそうだ。「自然豊かな公園の傍に好んで住む人には、公園の里山保全のための活動も、理解し、愛してほしい」と赤羽さんは切に願う。
また、クラブの活動年数はまだ10年弱だが、里山保全には15年サイクルの雑木林の皆伐更新が欠かせない。これから皆伐更新を実施していくためには、今のスタッフが引退した後に頼れる世代が必要となってくる。今までの近隣住民も参加する定例活動では、芋ほりなどの楽しい部分が主に行われてきたが、これからは雑木林の整備や雑草抜きなどの、地味で大変だが大切な作業も子どもたちに体験してもらい、里山を保全するということを本当の意味で学んでもらいたいということだ。
よりたくさんの人々を巻き込んで、無理しすぎず楽しく、しかし真面目に活動の幅を広げていく、これからの彼らの活動が期待される。
赤羽さん。自主的に長野に山仕事を学びに行くなど、積極的に活動されている。
活動に参加して-執筆担当:大谷 優佳 青山学院大学 文学部心理学科突き抜けるような青空と鮮やかな紅葉のもと、2007年12月9日の日曜日に1年で最大のイベントである収穫祭に参加させていただいた。スタッフの方たちの裏での下準備やサポートの元、今までの活動の中で収穫したキノコや野菜、米をふんだんに用い、餅つき、ピザ焼き、野菜スープ作りなどが行われた。ご近所ネットワークにより家族ぐるみで来ている参加者がとても多く、私を含め会員ではない一日体験の方もたくさんいたが、全く気兼ねの必要のない元気で開放的な雰囲気の中、50名を超える参加者たちは親子餅つきやピザ作りをしたり、スタッフの引く一輪車に乗り込んで大はしゃぎしたり、子ども同士で鬼ごっこをしたり、親同士で世間話したりと、思い思いに楽しいときを過ごした。
最近の子どもは外で遊ばないとか、同年代集団で遊ばないとかよく耳にするが、ここでの子どもたちは初対面で年も名前も知らない同士でも元気に走り出していく。それは、豊かな自然の中だからというのもあるのではないだろうか。また、親子で参加されたお父さんが、「活動に参加するようになって、『どのようにしていつも食べている食べ物が食卓に並ぶのか』を子どもが考えるようになった」と言っていたのがとても印象的だった。
こんな風に、子どもが自由に遊べて、学べる空間がずっと保たれていくといいなと思う。