企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

藤沢グリーンスタッフの会(団体のウェブサイト

里山保全ボランティアというと、みなさんはどのような団体をイメージするだろうか。例えば、「市民の有志が集まって会を立ち上げ、会のメンバーが協力して里山の管理を行っていく団体」をイメージする人も多いかもしれない。今回紹介する「藤沢グリーンスタッフの会」は、里山保全ボランティアのリーダーとなりうる人材を養成するために、初めは、行政の呼びかけによって講座を受講した有志の方々が作ってこられた団体である。活動の目的が「里山保全そのもの」もさることながら、「里山保全のために、人を育てる」ことも大変重要視している。その、「藤沢グリーンスタッフの会」事務局長の国分俊明さん、事務局総務担当理事の樋口弘之さん、養成講座を担当している小山壽尉さんにお話を伺った。

養成講座とは

神奈川県藤沢市は都心までおよそ1時間で行くことができ、東京のベッドタウンとして発達してきた。人口はおよそ40万人。湘南地域の中心的な都市として栄えているが、その一方で現在でも緑豊かな自然が残されている。
藤沢市はたくさんの里山を所有しているものの、行政だけでは管理しきれないと、2001年から、藤沢市の公園みどり課は藤沢の自然・みどりを守る市民活動の施策として里山保全ボランティアリーダー5ヵ年計画を実施したそうだ。藤沢市にも里山を保全したいという気持ちは強いが、潤沢な行政資金があるわけではない。専門業者に委託するとどうしても膨大な予算がかかってしまう。
一方で、市民にも自分たちの手で里山を保全したいという人が増えてきた。そこで考えられるのが、市民ボランティアによる里山保全ということになるのではないかと、國分ん。
樋口さん達は、講座の最初にしっかりと理念を学ぶ。その理念に共感し実践できている人たちが、現在藤沢グリーンスタッフの会の中心メンバーとして活動しているのではないだろうか。こんなお話しもいただいた。現在、人間と里山の新たな関係として広がっているのがレクリエーションの場としての里山の利用だ。藤沢市でも、市が広報で市民ボランティアを募集すると人が集まってくる。しかし当然のことながら、その集まってくる市民は里山管理を実際に行ったことのない人ばかりだ。そこで、こうした市民をサポートするスタッフが必要になってくる。そのような人材を育てるために、里山保全ボランティアリーダー5ヵ年計画は実施され、それが発展する形で「藤沢グリーンスタッフの会」は結成された。
藤沢グリーンスタッフの会に入ると、まず1年間の「養成講座」を受けることになる。全10回あるこの講座は、里山を管理していくための技能を一から学んでいく。例えば、鎌の持ち方。小山さんによると、鎌にはきちんとした持ち方があるとのことなのだが、今まで一度も鎌を持ったことのない受講生たちは鎌の持ち方も「ただつまんでいるだけ」。正しい持ち方が出来ないのだそうだ。だが、鎌は持ち方の間違いが大怪我につながる。スタッフは口すっぱく「手の平になじむ」正しい持ち方を指導していく。
こうしたフィールドに出て実習する活動に加え、「里山を保全する意義」といった知識を身につけていってもらう講義も平行しておこなっていく。現在フィールドは、藤沢市の西俣野緑地をはじめ、10ヶ所ある。こうして一年間の養成講座を受け終えた受講生は修了証書を受け取り、藤沢グリーンスタッフの会の正式なメンバーとして迎えられることになる。
活動を開始して7期目の今年の参加者は女性が3名、男性が15名。現在は、藤沢市民のみとなっているが、特に制限しているわけではないそうだ。参加される方の動機は「花や山登りなど、体を動かすのが好き」といった理由から、「第二の人生を里山保全にささげたい」といった理由までさまざまでだが、「みんなが、楽しく活動ができることを一番大切にしたい」と小山さん。平均年齢は女性が54歳で、男性が62歳。なかには30代の参加者もいるが、とくに男性は15人中12人が60歳以上と、ほかの多くの森林ボランティア団体と同様、仕事を定年退職後に活動に参加する人が多い。将来的には、若い世代も取り込んでいきたいと考えている。
左から小山さん、樋口さん、国分さん。藤沢市市民活動支援センターの会議室にて。

グリーンスタッフの会の今後

これまでの6年間で、120人近い里山保全ボランティアリーダーが生まれてきた。しかし現在、実際に行政がボランティアを集め、その指導的役割を担うといったことはまだないのである。「団体は作ったが、その団体をいかに活用していくか」「今後どうしていくか」が課題だという。それでも、西俣野緑地をはじめ、10ヶ所のフィールドが市から提供され、グリーンスタッフの会のメンバーが里山の手入れを行っている。西俣野緑地は、竹林が多いので、伐採して竹から竹炭を作る活動や、春には竹の子狩りを行う。また、椎茸を栽培や、クラフト作りなど、単なる保全活動にとどまらず、グリーンスタッフの会のメンバーが楽しめるさまざまな活動をしている。今回お話を伺った方々も、この活動を非常に生き生きと、楽しそうに話してくださった。また、稲作がなされなくなった休耕田を復元したいという市民活動の指導を行う、「援農」活動も始まったのだという。活動が始まってから7年目。まだこれからという部分は確かにある。しかし、それだけに大きな可能性を秘めているといえる。歴史を築いていくメンバーの意欲も高い。里山保全を行う人材を育成するという、新たな形のボランティアの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
活動に参加して-執筆担当:岡田 航 早稲田大学 人間科学部 人間環境科学科藤沢グリーンスタッフの会の活動に参加して実感したのは、森林保全の作業は重労働であるということです。まず体験したのは、木の間伐。細い木だったので簡単に伐れる、と思いきや、初めての体験で慣れていないこともあって非常に力を使いました。その木を杭に加工する際にも、なたの使い方が難しく、杭とはいえない代物になってしまいました…。この日は一年の最後の活動日だったため、納会が行われ、美味しい豚汁と、採りたての焼き椎茸をいただきました。青空の下食べたほかほかの食べ物は、まさに絶品!会のメンバーの方々も温かく話しかけてくださって、一日の疲れも吹っ飛びました。
実際に森林ボランティア活動に参加し、取材を行ってみることによって、現場に行かなければ分からないことを沢山知ることができたと思います。とても貴重な経験になりました。この経験を大切にして、これからも勉強に活かしていきたいと思います。