企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

里山ねっと赤坂

 仙台市青葉区。赤坂ニュータウン内にある赤坂1号公園では、子どもたちの笑い声が聞こえる。10月4日、今日は「里山ねっと赤坂」と赤坂2丁目町内会共催の、里山コンサート。町内の約120名が集まる中、町内とその近隣に住む方の楽器の生演奏があり、傍らでは子どもたちが手作りおもちゃのさかな釣りを楽しんでいる。お昼ごはんは、お楽しみの芋煮会。「おいしいね」「もう一杯おかわりしようかな」。とても和気あいあいとした雰囲気だ。その公園の奥には見渡す限りの森。これが里山ねっと赤坂のフィールド、蒲沢山だ。

地域とともに

 『里山をかこむネットワークづくり』。これが、里山ねっと赤坂の名前の由来である。酪農や林業、地域住民や小学校とネットワークをつくりながら、みんなで共存できたらいいな、という願いが込められているそうだ。団体のメンバーほとんどが赤坂ニュータウンの住民で、7名の推進委員を中心に、会員は約40名。山登りが大好きな人、チェーンソーが得意な人、きのこに詳しい人、海の男だったのに今では山で活動している人、など十人十色だ。代表の和田伸太郎さんは「大きく宣伝しているわけじゃないのに、自然とたくさんの人が集まってくれるんだよ。問い合わせも多くてね」と、嬉しそうに話してくれた。
 蒲沢山の森の蔓(つる)で籠やリースを作る講習会、チェーンソーなどの器具の使い方を学ぶ技術講習会。紅葉ハイキングや、冬には雪に残されたカモシカ・キツネ・ウサギ・リスなどの動物たちの足跡を見に行くトレッキングも開催される。季節ごとに大人から子どもまで誰でも楽しめるイベントが盛り沢山だ。
 「自分たちが自然を楽しみ、好きだというだけじゃもったいない。もっともっと地域にも広げたい。」地域に根付いた、"まち・コミュニティづくり"という団体の思いを強く感じた。
緑の生い茂る場所、蒲沢山

活動わずか3年半で、楽しめる里山へ

 和田さんご自身は蒲沢山をよく一人で散策されていたが、2004年に町内会主催で蒲沢山をハイキングしようというイベントがあった。和田さんも参加されていたが、初めて裏山を訪れた町内に住む人たちは、こんなに素晴らしい山があったのかと感動し、その時の仲間で自然に会ができたそうだ。
 その、皆さんの住んでいる場所から目と鼻の先の蒲沢山でぜひ活動したいということで、2005年1月、何度も申請を行い仙台森林管理所から『遊々の森』※ に認定された。活動は、まずは道をつくることから始まった。林道、沢、尾根の道。森の中を歩いて行くうちに、たくさんの新しい発見があった。「川にはこんなに大きなイワナがいるんだよ」と、副代表の橘和英さんは、目を輝かせながら写真を見せてくれた。
 もちろん美しいだけではなかった。不法投棄された粗大ゴミを見つけたときは、愕然としたという。会員の方々が協力し合って、粗大ゴミを撤去した。現在は、心ない人が山に入らないよう車止めのチェーンをかけ、手作りの看板を設置し、子どもたちに植林をしてもらうなどで、不法投棄の防止にも取り組んでいる。これがきっかけとなり、山に関わった人々が自然に関心を持ち、意識が変わっていった。

※国有林を教育活動場所に広く開放することで、「体験活動を通じて理解の促進と共生する社会の実現」の推進を目的とした制度。
手作り東屋と里山ねっと赤坂の皆さん

次の世代へつなげる

 赤坂ニュータウン内にある川前小学校とは年間10回ほど共に活動している。学校内での森や環境に関する授業も会員の方たちが行う。授業では子どもたちに考えさせるよう、興味を持ってもらえるように話すことを第一に心がけているそうだ。「こんな森があるなんて知らなかった。連れて行ってほしい!」「将来、森に関する仕事がしたいです」などといった感想が寄せられる。もちろん、実際に子どもたちを連れて行く。高学年の子どもたちには、ただ観察してもらうだけではなく枝打ち作業もしてもらう。みんな「あれは何?」「これは?」と、会員の方々を質問攻めにする。先生たちも子どもたちのいきいきとした表情を見て驚き、それが次の授業にもつながっているのだ。
 子どもたちの笑顔が、活動のやりがいにもつながっている。「私たちで終わりではなく、次につなげるというのが私たちの役目だ」子どもたちのこの経験が、どのような形であれ、心のどこかに残り将来につなげていってほしいという、団体みんなの想いである。
活動に参加して-執筆担当:小澤 智美(日本女子大学 家政学部家政経済学科) 里山ねっと赤坂の皆さんに案内してもらいながら、森を歩いた。近隣の小学校から来た子どもたちと一緒に歩いたのだが、走り回ったり木の実や石を拾い集めたりと元気いっぱい。「これ、食べてみて!おいしいんだよ。」渡された小さな実を恐る恐る食べてみると、甘酸っぱくておいしい。子どもたちは森での遊び方を知っている。自然に触れる機会があまりなかった私には、何もかもがキラキラして見えた。
 歩いていると、自然と会話も歩調も弾む。団体の皆さんも、子どもたちも笑顔で溢れていた。森の広さは約260ha、こんなに広い場所なんて歩けるのかなと不安だった。けれども、その不安はいつしか消え、約4時間かけて長い距離を歩いたはずなのに、森を出た時は爽快感で胸いっぱいだった。森を歩いているだけでこんなにワクワクして、楽しくて、うれしい気持ちになるなんて自分でも驚いた。この時感じた気持ちは、きっとこの先忘れることはないだろう。
 団体の方々の想いがいっぱい詰まった蒲沢山。これから先も、ずっとずっと、笑顔の溢れる場所であってほしい。