企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

粟野の森の会

 子どもたちのにぎやかな声が森の中に響く。千葉県鎌ヶ谷市。人口10万人を有するこの市の北部、新鎌ヶ谷駅から徒歩15分のところに粟野の森はある。住宅地のすぐそば、国道に隣接する5haの市民の森は、10年ほど前まで不法投棄が絶えず、ごみが放置されたままの場所だった。

街の中に森がある

 2000年3月。粟野の森の会の前身である粟野の森を考える会(以下、考える会)が立ち上がる。粟野の森は鎌ヶ谷都市開発公社の所有地だが、当時は用途が決定しておらず、大病院の建設や工業団地の誘致など様々な可能性を秘めた土地であった。しかしその一方で、身近な緑がなくなってしまうかもしれないことに危機感を持ち、何とかしたいと考える市民もいた。その一人が考える会発起人であり、現在粟野の森の会(以下、森の会)理事である佐藤喜夫さんだ。「これからどうなっていくかはわからないながらも、粟野の森に関心を持つ市民が居ることを行動で示し、粟野の森のためにできることをしたかった。」「都市と隣接して8haもの森が手付かずで残っている。森の何が貴重かではなく、まとまった緑が都市のすぐ近くにあるという事実が極めて貴重です。」と佐藤喜夫さんはいう。佐藤さんを中心にまずは思いを共有できる仲間集めが開始され、地元小学校のPTAや職場のつながりなどから10人のメンバーが集まった。
 粟野の森は自分たちの土地ではないため、考える会の発足当時は勝手に入ることができず、具体的な活動目標を決めることも出来なかった。しかし、そのような状況下で森に隣接している市道・国道のごみ拾いから始めた。活動を始めた当初は、大型電化製品などの粗大ごみや家庭ごみが大量に不法投棄されていたという。回を重ねるごとに活動への賛同者は増え、2001年には粟野の森を市民の公園にするべく活動していこうという方向性の元、粟野の森の会(以下、森の会)と名称を変更した。10人のメンバーから始まった森の会も今月(2009年10月)で40人を数えるに至った。
森へ向かう小道。

市民の森を創る

 2003年から市役所と森の会メンバー、そして市民を巻き込んでの勉強会「粟野の森を考える勉強会」が行われ、将来粟野の森が市民の公園となることがほぼ正式に決定した。活動開始時、森に入るためにはそのとき行う活動ごとに市に許可を取らなければならなかった。しかし相互の信頼関係の下で規制が緩和され、もっと自由に森に入れるようになったのだ。そのような流れの中で次第にごみ拾い以外の活動もはじめるようになった。なく虫の会、植物観察会、竹かご作り講習会、炭焼き・焼き芋の会、、、。森の会のメンバーの興味関心を企画化し、季節に応じて多くのイベントを開催する。年を追うごとに市民の関心は高まり、昨年は年間700人弱が粟野の森で行われるイベントに参加した。「森は我々(=粟野の森の会メンバー)のものではないから。我々だけでなく市民にもっと粟野の森を知ってもらう、そのために森にきてもらうためのイベントを主催しているわけ。森は市民10万人のもの。イベントは目的ではなく手段。会としてはどれだけ市民に利活用の選択肢を用意できるかが問われていると考えています。」代表の小出達雄さんはにこやかに応えてくれた。
地元の祭りで粟野の森のPR

いま求められる活動

 今回は数ある粟野の森の会の取り組みの中でも評判の高い「子どもクラブ」を取材した。子どもクラブは鎌ヶ谷コミュニティセンターの企画の一環として、毎年10人前後の子どもたちを募集して行われている。月に一回定例活動を春は草笛作り、夏は虫取り、秋は木の実拾い、冬は冬眠する生き物の観察など、粟野の森の会のメンバーの指導の下、四季折々の粟野の森を体感する。鎌ヶ谷市内の4つの小学校から有志で集まってきた子どもたちは森との付き合い方を学んでいく。「自然との関わりがない子どもたちは、最初膝丈くらいの茂みにも入れません。でも、一年もすればそこに突進していくようになる(笑)」 子どもたちに囲まれながら、小出さんはうれしそうに語ってくれた。粟野の森が多くの市民にとっての憩いの場になる日も近い。
活動に参加して-執筆担当:石原光訓(早稲田大学政治経済学部) 秋晴れの10月、今日の活動はどんぐり集めだ。森の中にはたくさんの種類のどんぐりや木の実、種が落ちている。スダジイ、カシ、コナラ、スギ、、、。それらを集めて、こまのように回してみたり名前を調べたりする。集めるといっても慣れるまではなかなか難しい。見えているのだろうが、気がつかないのだ。子どもたちもだんだんと慣れてきて、違う種類のもの、形が変わったもの、大きいものなど自分が気に入ったものを集めるようになる。科学技術により自然に目隠しがされてしまっている現代だからこそ、子どもたちの成長には人間以外の命との接触が不可欠。自分以外のもっと小さく弱い命を知ることが、自然の中でも人間同士の関係でも想いやりに繋がるのではないかと思う。森を守った鎌ヶ谷市とそこで学ぶ子どもたちには、無限の可能性が広がっている。今後の活躍に期待したい。