企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

特定非営利活動法人 ネットワークみどり緑

 東京から新幹線に乗って二時間半。新潟県の中央部に位置する三条市の燕三条駅前から歩いて5分。燕市の三条燕インターチェンジが近くにあり、大型店やアパートが立ち並ぶ中、ぽっかりとした空間に遭遇する。
 須頃郷第2号公園。愛称、三燕みどりの森だ。この地域は三条市と燕市の境になっており、両市によって合併を想定した開発と都市化が進められていた。この公園は、開発の際に緑地(公園用地)として残された場所だが、整備はされていなかった。
 「何も整備されていなかった公園用地を市民が中心になって緑ゆたかな公園をつくろう」。そう思った有志が集まり、2002年に「ネットワークみどり緑」(以下「ネットワークみどり」)が誕生した。「緑豊かな公園」という願いを込めて、団体の名称は「緑みどり)が2つ付けられた。
 「緑あふれる公園を作るには、植物に詳しい人じゃないとできない」。ネットワークみどりは、林野庁に勤めていた関根依智朗(いちろう)さんが中心となって活動している。
 「公園を作る前に、市民みんなに納得してもらえるものにしたい」そう思った関根さん。市民アンケートを実施して集約し、市民の思いにそった公園づくりを基本に、ワークシップを何十回も重ね、公園計画案をねりあげ行政の許可を得た。

四季折々みんなで楽しめる場所に

 「公園」と聞くと、ブランコやすべり台等の遊具がある場所だとつい想像してしまうが、ここにはそんなのは一切置いていない。大きな原っぱの周りをたくさんの樹木が囲っている場所だ。
 「とにかく公園を知ってもらい、子どもからお年寄りまで幅広い人に親しんで貰える場所にしたかった」と話す関根さん。近隣の住民には初め、この公園の存在はほとんど知られていなかった。
 より多くの人に楽しんで貰う為に、様々な工夫をこらした。四季折々花が咲き、野鳥が飛び交い、多くの昆虫が生息する緑ゆたかな公園を考えた。樹木も山野草も近隣の里山に生息している植物を選定している。
 花壇は多年草を使い一年中花が咲くようにしたり、子どもたちが喜ぶ野鳥が来るように実のなる木も植え、昆虫の好む食草を植え農薬は使わない活動を行うようにした。そして、車いすの人でも気軽に来られるように遊歩道の整備もした。ジョギングの人が途中で寄れるような工夫もした。最近では人気のあるヒメサユリを植えようと計画している。「ヒメサユリは、もともと比較的高い山に群生している植物でレッドリスト(*)にも載っている貴重な花だ。近隣にヒメサユリが群生している里山はあるがお年寄りや障害をもっている人たちが手軽に花が見ることができるように、首都圏の人もこの公園に興味をもってほしいと思っている」。公園づくりの話をする時の関根さんは、とても笑顔だった。
笑顔で話す関根さん

市民参加の手作り公園

 三燕みどりの森は、公園の約7600平方メートルの広さで三条市と燕市にまたがっており、三条市の地籍が若干多い。 「この前も合併話が持ち上がったが結局無くなってしまった。公園の扱いは市によって異なるが、私たちの会は市を平等に扱っている」と関根さん。 会の活動メンバーには燕市出身の人も三条市出身の人もいる。公園のシンボルツリーは桂の木であるが、両市の境界線上に植え、池もそれぞれの市に作った。そういう心がけがあってか、公園づくりに参加するみんなの姿は仲がよさそうで楽しそうに活動をしていた。 植樹祭の時には両市の市長、市議会議長が駆け、植樹している。 三燕みどりの森にはこんなエピソードがある。燕市は白ふじが有名で、三条市は万葉のふじ(紫色奈)が有名なので、それぞれの市の敷地に木を植えることにした。しかし、後になって逆であることに気がついた。「始めは植え直そうかという話もあったが、お互いの市には仲良くなってもらいたいのでこのままで良いのではないか」ということになり、今では逆のまま2本のフジの木は仲良く植わっている。
白ふじと万葉のふじ。藤棚の間に市の境がある。

将来の課題

 「ネットワークみどり緑」ができて8年目の今年、公園はいよいよ完成する予定だ。
 しかし、活動はまだまだ終わらない。完成後も、管理や手入れのための作業がこれからもずっとある。1000本以上の木が植わっているこの公園は、管理を怠ってしまうとうっそうとした森のようになってしまう危険性がある。公園の管理は小まめに行うことが大切である。その為には後継者が必要不可欠である。今いる会員は若い人でも40代後半だ。できれば近隣住民に参加してもらいたいが、公園の周りには入居者が頻繁に入れ替わるアパートばかりで、昔から住んでいる人がほとんどいない。
 公園が完成したら行政に寄贈し、管理を会がまかることになっている。管理は公園が存在する限り続くことになる。
 植樹祭などのイベントでは、若い人が子どもを連れて来てくれる。そういう人たちに、興味を持って活動に参加してもらいたい」と関根さんは語る。
 公園が完成することになっても、会の熱心な活動は続きそうだ。

*レッドリスト:日本の絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト。日本では環境省がまとめている
活動に参加して-執筆担当:本橋孝昭(東京理科大学経営学部経営学科) 私がネットワークみどりの活動に参加させてもらった日は、まだ残暑が残る夏でした。
 「ここは本当に公園なのだろうか」そう思ってしまうくらい、辺り一面に雑草が生い茂っていた。夏場は特に雑草の成長が激しく、二週間もすると足が隠れてしまう程成長してしまうそうだ。
 そんな中、ネットワークみどりのメンバーと草刈りの作業をして、雑草が綺麗に片付いた時は、すごく気持ち良かった。
 休憩時間は、皆でお菓子を食べた。会のメンバーが和気あいあいとしているのが凄く伝わった。
 一番大変だった作業は、石垣造りだ。形が良い石を選んで積むのだが、1つの石が何十キロもあるのでとても苦労した。関根さんは軽々と石を持ち上げていたのに。 緑みどりは、まだまだ元気に存続すると思った。
 この活動を通じて、自然に対して真剣に取り組んでいる人がたくさんいる事が改めて分かりました。学生生活では出会えない素晴しい人達と出会えて、とても嬉しかったです。