企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

古賀市緑のまちづくりの会

 福岡県古賀市。博多駅から電車で20分、福岡都市圏の東部に位置している。人口約5万8000人。福岡市のベットタウンであり、食品や機械の工場が立地する工業地帯を有する。そんな一面とともに、山・川・海のすべてがそろった自然環境に恵まれたまちでもある。ここ古賀市で「緑を守り、育てることで豊かに住みやすいまちづくり」を目的として活動している団体、それが「古賀市緑のまちづくりの会」(以下、緑のまちづくりの会)である。

わが子のように木を育てる

 1999年7月、古賀グリーンパークが設立された際、現存する森を市民の森として活かしていく公園づくりを目標とする方針が市民検討委員会によって打ち出された。これに伴ってグリーンパーク内の竹林を広葉樹の森に再生し、人々の健康づくりのために園芸福祉活動を推進するという「森づくり」と「園芸福祉」の二つを柱に、2000年9月に緑のまちづくりの会は結成された。2001年には10年間で100万本を九州各地に植樹する「九州ふるさとの森づくり」が展開され始めた。当時グリーンヘルパーを養成する講座に初代会長である山川千寿さんが参加したことがきっかけで100万本のうちの10万本を古賀に植える構想が持ち上がり、「古賀市10万本ふるさとの森づくり実行委員会」(九州電力株式会社をはじめ古賀市や緑のまちづくりの会、福岡グリーンヘルパーの会、学術経験者)が結成されることになる。現在、「古賀市10万本ふるさとの森づくり実行委員会」が中心になって、市民や企業のボランティアに呼び掛け共に植樹祭や夏・秋の育林行動(草刈り作業)に取り組んでいる。
 結成初期の活動は、グリーンパーク内の竹伐りだった。「伐った何千本もの竹は肩にかついで運ばなければならず、次の日には動けなくなるほど大変だった」と青崎安孝さんは振り返る。それから10年。現在第一回植樹祭で植えた樹木はすでに9m近くまで立派に成長した。
 今でも活動する中での苦労は後を絶たない。切ってもすぐに伸びるクズの駆除、夏の炎天下での作業…。古瀬幸雄さんは「草刈りの最中、間違って若木を切ってしまうときもある。かわいいものだから、そんなときはごめんね、といって土に戻すの」と木をいとおしむように言われた。会員の皆さんは、木を育てることは子育てと一緒で反省させられたり、さまざまなことに気づかされたりするという。整備された園内の森を見渡すだけでも一年間365日のうち100日以上活動に出ているその努力を感じとることができる。
古賀グリーンパーク内には地域に合った28種類の樹木が植えられている。

緑のまちづくり、小さな芽を咲かしていこう

 地域の方々が森づくりに関心を持ってもらえるような努力も欠かしていない。グリーンパークで伐った竹は処分するのではなく、脱臭効果等がある竹炭にして植樹祭に参加した市民に配布している。自然を守りどのように共生していくべきか、それを考えながら活動へ励んでいる。
 そんな理念とともに後世に古賀の緑を残していきたいという思いから、地元の子どもたちとおこなっている活動もある。古賀市立青柳小学校の子どもたちが取り組んでいるドングリ拾いから育苗、グリーンパークへの植林、下草刈りまでの「ドングリの森づくり」を支援している。「子どもたちには生き物を育てているという意識を持ってもらいたいと思っている」と宿理英彦さん。小学校を卒業し中学生になっても草刈りに来てくれることもあるそうで、その思いは子どもたちにしっかり届いている。
園芸福祉庭園「はなちどり」。ここではハーブなどの花苗が育てられている。

心と心の会話をつむぐ「園芸福祉」

 「森づくり事業」と共に展開しているもうひとつの活動、それが「園芸福祉事業」である。「園芸福祉」とは花を育てるといった園芸作業を通して、子どもからお年寄りまで世代を超えてすべての人が一緒に楽しみ、豊かな社会をつくっていくことを目的とし、働きがいや生きがいなどを与える効果があるとされている。緑のまちづくりの会では「はなちどり」という園芸福祉庭園を運営しており、そのビニルハウスの中で花苗を育て、古賀駅前や市内の施設の花壇を飾っている。また古賀駅前の花壇は町内会の方々が協力的に水やりをしてくださっており、花壇への水やりは少しずつ地域の方々に浸透してきているようだ。また古賀市立古賀東小学校の三年生と共に、独り暮らしのお年寄り宅に花鉢を届ける活動もしている。「自分の記憶に残って大人になったときに何かに活きてくれれば」と納富育代さんは古賀の子どもたちに願いを託す。彼らのこの経験が将来古賀の緑のまちづくりへつながっていくと考えると希望で胸は膨らむだろう。
 人と人、人と緑の交流を深める「園芸福祉」、そして「森づくり」。これらの活動がさらに拡がって町全体を潤す日は遠くない、そんな予感さえした。
活動に参加して-執筆担当:坂部布実(早稲田大学創造理工学部建築学科) グリーンパークでの草刈り作業はたった一日ではあったが、昨日のことのように思い出され、どこまでも広がる緑の地平線を見渡せるあの場所に立つ感覚が蘇る。草の匂い、虫の音、流れていく風。今でも忘れられない。
 作業後、ブルーシートの上で輪になって、お菓子をつまみながら森づくり談義をした。竹の伐採が原因で今まで続いてきた生態系が崩壊するのではないか、しかし放置しておけば他の植生の成長が妨げられてしまう。そんな葛藤もあるが、「活動によってささやかながら地球環境改善に貢献している」その'信念'と会員どうしが楽しく意思疎通しあうことを忘れずに努めてきた。
 森は環境さえ整っていれば無限の命だ。そして人の思いを伝えるメッセンジャーでもある。'信念'は森というひとつのかたちとして遠い未来まで受け継がれていくに違いないと、まだ見ぬ将来の古賀の風景に思いをはせながら、そう信じたいと思った。
学生レポーターの坂部(右)と宿理さん(左)