企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

自治医科大学とちぎ子ども医療センター花咲jii

 栃木県下野市のJR宇都宮線自治医大駅から徒歩15分。駅名のとおり自治医科大学の広大な敷地が広がる一画に、かわいらしい外観と沢山の花とみどりに囲まれた建物がある。「自治医科大学とちぎ子ども医療センター」(以下、医療センター)である。「発達障害」「精神心理疾患」の医療機能に特化した日本で最初の大学病院併設型子ども病院として、2006年9月に開院した。「自治医科大学とちぎ子ども医療センター花咲jii」(以下、花咲jii)は、この医療センター周辺の花壇の植栽と整備を同年10月より実施している。
 今回、花咲jii会長の藤岡義三さん、事務局の冨健治さんにお話を伺った。

プロが生み出す“癒しの空間”

 “花壇”というとどのようなものをイメージするだろうか。
 花咲jiiの花壇は、私たちが身近に想像するものとは全く異なる。造園のプロが監修し、色合いやメンテナンスを考慮した花とみどりから“癒しの空間”が生み出される。動物の形にかたどられた木、豊かな色の花々、柿やりんごの実のなる木、香りのよいローズマリーなどのハーブ、それぞれがバランスよく配置されている。病院とは思えない豊かな色彩の植物が印象的だ。
 「病気で闘う子どもやその家族を元気づけ、病院に従事している医療関係者、周辺住民にも癒しの空間を提供したい」そんな思いのもと、殺風景になりがちな建物の周辺に、花やみどりだけでなく昆虫や野鳥をも呼びこみ、季節感を楽しめる空間を創っている。
花とみどりに囲まれた医療センター

できる人ができることを-小さな力が大きな力に

 医療センター開設当初、医療機能の充実とは裏腹に、医療センター周囲の花木は最小限のものしかなかったという。医療センターのアートコーディネートをした文星芸術大学林香君教授はじめ、その状況を知った栃木県造園建設業協会と日本造園修景協会栃木支部が中心となり、花咲jiiを立ち上げた。
 現在の活動に至るまでには、多くの方々の理解と協力があった。造園会社、医療センター関係者、地域ボランティアなど、今までに何らかの形で活動に携わったメンバーは、わずか5年で累計1700名余り。
 現在は、毎月、造園会社5社、地域ボランティア約50名を中心に、医療センターと連携を取りながら月に一度の定例活動が行われている。
 寄付や参加の強制はなく、寄付のみ、都合のよい活動日のみ、という参加形態もある。花づくりに関心のある人が口コミをきっかけに参加することもある。また、毎日必要な花の水やりは、医療センターのボランティアスタッフの方が担当してくださっている。「無理せずできる時にできる人が」という考えが、多くの人が花咲jiiに関わるきっかけとなっている。
 「あえて課題点を挙げるなら、“持続性”だね」と冨さんは言う。事務局がいつまで無償で続けられるか、安定した資金確保など、今と同じように続けていく方法を今後は考える必要がある。
活動に参加する地域ボランティアメンバー

うれしい一言―“感謝”の言葉

 建設コンサルタントの仕事の傍ら活動している冨さんに、活動の源を伺った。すると“感謝”という言葉を即答してくれた。活動を始めた頃は全く予想していなかった“感謝”の言葉を、多くの方から頂くという。
 患者も医師たちも、緊迫した空気や高度な医療器具に囲まれた無機質な空間の中で、日々を過ごしている。そんな時、窓から見える色とりどりの花と鮮やかなみどりに、ふと癒される。そんな声が、患者やご家族、医師、さらには隣接する大学病院の患者から寄せられている。ターミナルケアの患者さんから「さいごにきれいなお花がみられてよかった」と、病院を通じて間接的にではあるが、お礼の言葉が届いたという。
 気候に左右され、花が咲かなかったり枯れてしまったりと、思う通りにいかないこともある。しかし、活動のモットー「慈しむ医療へのサポート ひと時の癒しの空間づくり」の言葉通り、花咲jiiは花とみどりを通じて多くの人の心に癒しを与え続けている。

全国へ発信―花咲jiiの思い

 藤岡さん、冨さんには「花咲jiiをモデルとして、全国に同じような活動を広めることができたら」という思いがある。日本の医療技術は高く、設備や病院の内装には目が向くものの、外構については意識が低いと思われる。それを象徴するのが病院の周囲の花やみどりの少なさだ。難しいこともあるが、医療技術の高い自治医科大学から、技術とともに「花とみどりがつくりだす癒しの空間」を全国に波及していきたい。これは花咲jiiの遠大な目標である。
活動に参加して-執筆担当:鈴井美穂(聖心女子大学文学部教育学科) 活動日、医療センターに入ると、取材に訪れた一か月前に目にしたりんごの実が真っ赤に色づいていた。活動開始の午前八時、すでに作業が始まっていた。医療センターの周囲にあるすべての花壇が活動場所である。ボランティアメンバーと共に、鎌を使った草刈りを体験した。花を傷つけないように周囲にある雑草を刈り取っていく。木、花、ハーブに囲まれて行う作業は、夏の暑さの中でも何か心地よさを感じる。“植物の力”なのかもしれない。花壇は、造園のプロの監修により色合いやメンテナンスが考慮されている。植えた植物の撤収は、花が枯れる前に行う。荒れさせないために、見る人にとっても活動に参加する人にとってもきれいな場であるために、プロによる判断は欠かせない。
 約ニ時間の活動終了後には不定期でミニ講座が開催され、季節の植物の話を聞いたり質問したりすることができる。活動の中に「楽しみ」があることは、メンバーにとって参加の魅力の一つなのかもしれない。
写真左、学生レポーターの鈴井