企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

化女沼2000本桜の会

 宮城県内陸に位置する大崎市北部、ここに化女沼(けじょぬま)という湖がある。新幹線で仙台駅からひとつ隣、JR古川駅から車で20分ほどの場所に位置する。化女沼の水面は34haと広大で、春になるとその湖畔に桜が咲く。冬にはヒシクイやマガンなどの渡り鳥が渡来し、ラムサール条約登録湿地にも指定されている、自然豊かな場所だ。この外周周辺を拠点に活動しているのが「化女沼2000本桜の会(以下、桜の会)」である。今回桜の会の代表世話人、佐々木哲朗さんにお話を伺った。

「古川に桜の名所をつくりたい」

 佐々木さんは、長年仕事で地元の古川を離れていたが、33年前に古川の地に戻って古川駅のそばで飲食店を経営している。佐々木さんは、名所の少ない古川を、もっと人の集まる、活気あふれる町にしたい、何か新しい大きなことをしたいと日頃から考えていた。そこで目をつけたのが、豊かな自然に恵まれた化女沼で、ここで何かできないかと考えを巡らせたそうだ。当時、西暦2000年を迎えるにあたって、それにちなんだことをしよう、更に多くの人に親しみのある桜を植えよう、というアイデアがあがった。この計画はほんの数人によって始められたが、お店のお客さんとの間でも話が広がり、さらに地域の活性化を進めたい市の協力も得て、2000年に「2000本桜植樹祭」が実現するに至った。
 「ただ桜を植えただけでは人は来ない」と佐々木さんは言う。よりたくさんの人に化女沼に来てもらうため、一般公募で集まった参加者に桜を植樹してもらうという工夫をした。参加者自身の手で1本の苗木を植え、それぞれの苗木には氏名の記された名札が取り付けられた。参加を希望する人は団体の予想を超えて、2180本もの苗木が湖畔を囲んだ。更に、当時このプロジェクトはテレビや新聞でも取り上げられ、その様子は全国に伝えられた。
 その後の育樹活動として、2000本以上の桜を枯らさないため、樹木医に協力してもらい木の病気について知識を身につけている。さらに、約40,000坪の植栽地域の手入れも欠かせず、毎週末には会員が下草刈りや支障木の伐採を続けている。夏にはクズの葉が桜を覆い尽くし、ヨシやアワダチソウ等の雑草が桜の幼木以上に伸びるので、桜が植えられていることに気づかずに桜を傷つけてしまうこともあるという。広範囲に渡り植えられたすべての桜の状態を把握するだけでも根気がいる活動だ。
湖畔に植樹された桜の木。向こう側には化女沼が広がる。

地域の人々の協力を原動力に

 桜の会では、化女沼を人が集まる名所にするために、地域の人にも応援してもらい、支えてもらうことを大切にしている。そのために、桜の会では「2000本桜植樹祭」の後にも、植樹イベントを何度か行っており、必ず地域の人に参加してもらっている。親子や保育園児たちにも自分の名札をつけて桜を植えてもらった。最近では、2011年の東日本大震災の後に子どもから大人までが一緒になって「鎮魂の桜」と「希望の桜」を植樹した。悲しみに負けず、前を向いてこれからも歩んでいきたいという願いが込められた。
 毎月桜の会では化女沼湖畔の景観をきれいにするためにゴミ拾いも行っている。地域の人々も一緒に化女沼を大切にしてもらうために、この活動は会のメンバーだけでなく、地元の住民や企業ボランティア、県や市の職員にも参加してもらっている。植樹に参加した子どもたちも参加したり、春には観桜会を兼ねて市民参加美化活動イベントとして100人規模でゴミ拾いを行うこともあり、化女沼の桜と美しい風景は桜の会と地域の人によって支えられている。
毎月ごみ拾いの日には「化女沼美化活動中」ののぼりを立てる。

想いを語り継ぐ名所に

 「化女沼の桜には人々の想いが詰まっている。」と佐々木さん。さらに、その桜が咲く化女沼という場所は地域の人たちの手によって守られている。だからこそ、そこに植樹された桜を決して枯らしてはいけない、桜の会の活動を50年100年と続けていかなくてはならないと、佐々木さんは語る。
 会員でもある伊藤さんは、元々佐々木さんのお店の常連さんで、「2000本桜植樹祭」では孫のために植樹をした。その後も新しい孫が誕生すると植樹をしており、桜の手入れに通い、ゴミ拾いにも参加している。
 「春、桜が咲くとき人は明るい笑顔で上を向くんですよ」と熱く語る佐々木さん。ある人の想いが桜の苗木へ伝わり、時を経てその桜が花開いたとき、その桜を見上げる人へと想いが届くと感じているという。化女沼の桜は毎年花を咲かせて湖畔を彩り、古川の桜の名所へと一歩一歩近づいている。桜の会と地域の人の愛情が伝わる化女沼の桜を見に、あなたも足を運んでみてはどうだろうか。
活動に参加して-執筆担当:織内薫(お茶の水女子大学) 8月の下旬、快晴のもと桜の会の清掃活動に参加させてもらった。軍手をした手にビニール袋を持ち、佐々木さんをはじめ地元住民の方や行政職員の方にお話を伺いながら、化女沼の周りをゆっくりと歩いた。汗でTシャツが肌にくっついてしまうほどの暑さであったけれど、休息場所ではみんながにこにこしていて、私も談笑に混ぜてもらった。周囲を1周しきったときには2時間ほど経っていて、「そんなに歩いていたんだ」とびっくり。
 活動を通して感じたのは、みんなでひとつの活動に取り組むことで得られる人とのつながりや楽しさ、それを終えた後の心地よい達成感であった。様々な人たちによる集まりではあるけれど、きっとこの気持ちは共通して持っているものだと感じた。
 豊かな自然と心温かい人々に出会って、私は今回の活動を通して桜の会のファンになった。
代表世話人佐々木さんのお店にてお話しを伺う。