企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

常陽森のボランティア

 茨城県JR水戸駅から市街地を抜けて車で約15分。常陽森のボランティアが活動する2つの森、『「体験学習の森』(2.2ha)と『元気の森』(4.4ha)がある。常陽森のボランティアは、森づくりに興味のある人達を対象とした県の森林ボランティア養成講座に参加した一部の修了生によって、2009年2月に設立された。

自分たちの手でつくり、活用する森

 常陽の森のボランティアの現在の会員数は24人、平均年齢は68歳。元の職業は会社員、公務員から自衛隊のパラシュート部隊の方など様々だ。会員にとってこの森は、「自分の趣味、道楽を実現できるところ。自分の手で作っていけるところ」と事務局長の日熊幸男さんは表現する。活動のテーマは、森を利用することを通じて、自然の恵みを分かち合うことだ。森林の下草刈りと間伐を月2回行い森の環境整備するのと同時に、森からもらえる恵みを存分に楽しむ活動を行っている。活動する2つの森のうち、『体験学習の森』には間伐した木から自分たちでウッドデッキとツリーハウスを作り、会員やイベントに来た子ども達の休憩や昼食をとる場所になっている。この森には畑と竹林もあり、ジャガイモやソバを育てたり、タケノコを掘って料理づくりを楽しむ。もう一つの『元気の森』には、同じく会員手づくりのピザ釜や炭焼き小屋がある。間伐材を利用したたくさんのキノコの苗床が置かれ、地域の一般の人も参加するきのこの会では、冬に植菌しシイタケやヒラタケなどを育て、秋には収穫祭できのこ汁を作る。お金をかけずに自分たちの手で1から育て、収穫後にはみんなで料理をして食べるところまで楽しむ活動だ。
 活動はまず自分が楽しむという気持ちが無いと持続できないと語る日熊さん。活動内容は会員みんながアイディアを出し合って決めている。新しいチャレンジや、時間や手間がかかるアイディアもあるそうだが、「何か新しいことをしたいと感じた時、時間がかかってもやりたいという想いを持続させ、みんなで力を合わせれば実現することができるんですよ」と話してくれた。
畑ではサツマイモやナスなども収穫される

子どもたちに自然体験を

 会では特に子どもに森に来てもらうことを大事にして、自然体験学習の機会を作っている。幼少期に自然に関わることによって、その後の人生がより有意義なものになるだろうと考えているためだ。自然体験のイベントに参加するのは、活動場所の近くにある児童養護施設樹(たちき)学園の子ども達や、茨城町と親交のある東京・品川区の少年野球チーム連盟の親子だ。会員が持っている技術を生かして、竹を切り出して水鉄砲づくりや、細くした竹にパン生地を巻きつけて、たき火で竹パンをつくる。他にも、間伐材のプランター作りや、会員がウッドチップを貯めた囲いを作り幼虫から育てたカブトムシの採集は、子どもたちがいつも楽しみにしている活動だ。子どもたちにとって森での体験はどれもとても新鮮で、毎回好評だという。
 「イベントの計画や実施など、限られた時間の中でたくさん行うのはとても大変だが、森の中で自然に触れ合っている子ども達の嬉しそうな顔を見るとまた頑張ろうという気になれる」と日熊さんは笑顔で語った。活動が多岐にわたるほど、特に自然体験学習イベントの実施には、人手確保や材料の準備など運営の負担も増えるという。子どもに森を楽しんでもらう時間を作る裏側には、常陽森のボランティアの地道な努力と工夫がある。
自然体験イベントが行われる『体験学習の森』

森が身近にある生活

 会員が、森の恵みを楽しみ、さらに子どもたちが森に遊びに来られる活動を行う理由には、「今の時代は森と関わりを持たなくても不自由なく生活していくことができると表面的には思われているが、もっと森が身近にある生活があってもいいのではないか」という考えがあるそうだ。「普段森とあまり関わりの無い東京の子ども達にもっと森に来てもらいたい」と日熊さんは話す。日熊さん自身は小さい頃に森でよく遊んでいて、自然との関わりを持っていたという。定年後、なにかしようと思った時にその原体験を思い出したことが、森に関わるきっかけとなった。今後は近くの茨城大学や東京の大学とも連携し、イベントの手伝いなどのボランティアを通して、大学生にも森に来てもらえるようにしたいという。
 会員はもちろん活動に参加した人達が、自分の手で食べ物やものを作り出す体験を通して、森の恵みと森と関わる楽しさを知る活動が続けられる。
活動に参加して-執筆担当:沼田 真奈(東京農業大学) 今回活動を行った『体験学習の森』に到着した時、先ほど述べた「現体験が蘇る」ということを私自身経験した。小学生の頃にキャンプやイベントで年に1、2回森へ遊びに行っていたのだが、澄んだ空気に触れ、青々とした木々の色を見ると当時の楽しかった思い出が鮮明に思い出された。森に入るまでは、小さい頃に森へ行っていた記憶など頭の片隅にもなかったので、記憶が蘇った時は本当に驚いた。それからはひたすら森に魅了され、終始「すごい!」「楽しい!」と子どものようにはしゃぐ自分がいた。活動内容としてはカブトムシの幼虫を入れる囲い作りと草刈りを行った。体力を使う活動でへとへとになった私の横で、楽しそうに作業をこなす会員の皆さんを見て、年齢に関係なく精力的に活動を行う人の生き方に惹かれた。また、会員の皆さんをやる気にさせる森のすごさを改めて感じた。今回の活動で普段生活しているだけではほとんど関わりのなかった森の存在を再認識し、森がどれだけの人の人生に影響を与えているのか感じることができた。
事務局の日熊さんにお話しを伺うレポーターの沼田