企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

加治丘陵につつじを植え戻す会

 埼玉県南西部の入間市(いるまし)にある加治丘陵は、関東平野と山地との境に位置し、青梅市、飯能市に接している丘陵地である。池袋から入間市までは、西武池袋線を使って約35分で行くことができる。加治丘陵は約424haを有し、陵線に沿った遊歩道(旧サイクリングコース)や桜山展望台がある市民の憩いの場である。標高189mに位置する桜山展望台からは、狭山丘陵、丹沢山塊、富士山、奥多摩・奥秩父連山、赤城・榛名・浅間山や都内の高層ビル群も見渡すことができる。今回は、会の代表の関根精隆(せきねきよたか)さんを含め4人の会員の方々にお話を伺った。

真っ赤なつつじをここ加治丘陵に

 「加治丘陵につつじを植え戻す会」(以下、つつじを植え戻す会)の代表である関根さんは、加治丘陵近くの団地に40年前から住んでいる。住み始めて10年程経った頃、加治丘陵の遊歩道に花や野草が減ってきたと感じ始めた。関根さんによると、「ここの遊歩道は、土日には200~300人が散歩コースなどに利用しており、昔から市民に身近な場所だ」という。そして、以前のように自然が豊かな遊歩道を取り戻そうと、1999年6月に関根さんを含む有志6人が中心となり会が結成された。現在も結成時のメンバーを含め21名の会員で活動している。つつじを植え戻す会という名前は、関根さんが幼い頃に遠足へ行った時に山で見た真っ赤できれいなつつじが記憶に強く残っていたことと、また、もともと加治丘陵にはつつじが植えられていたが少なくなってきていたこともあり、その真っ赤なつつじの風景をここ加治丘陵にも再現したいという思いからつけた名前だそうだ。
樹木の枝葉のあいだから光が差し込む

憩いの場としての里山になるように

 加治丘陵の近くには、団地を含めて多くの人々が住んでいる。関根さん達は、ここがその1人1人にとって憩いの場所になり、人と人とが交流できるような里山になることを目指している。加治丘陵は1960年代から開発が徐々に進み、開発前に比べてこれまでに約100haの樹木地がなくなっているという。そのため、1980年代からは地権者や市民による話し合いの場が持たれるようになり、1999年には「加治丘陵さとやま計画」が策定され、加治丘陵の土地を保全し、自然とのふれあいの場として活用されることが決まった。
 つつじを植え戻す会では、市とタイアップして許可を得たエリアでの間伐やミツバツツジ・コナラ・クヌギの植付け活動を主に行っている。活動では、下草刈り、笹刈りなど地道な作業が多く大変だが、関根さんは「植えた苗の成長や人とのコミュニケーションの機会が増えるという喜びややりがいを感じている」という。また、遊歩道を散歩する人達から「がんばってください」と声をかけられることもあるそうだ。関根さんたちはこの活動を続けることで、加治丘陵が誰でも入れてみんなが楽しめる場所になってほしいと願っている。

種から育てるヤマユリ

 そんな関根さんたちは、ヤマユリを育てることにも熱心だそうだ。活動を続けている中でヤマユリの数が減ってきていると感じ、育ててみようと試みた。ヤマユリは、日本特産の白いユリで、草丈は1~1.5m、花期は7~8月頃である。知り合いの伝手でヤマユリを種から育てる方法を教えてもらったが初めはなかなか思うようにいかず失敗していた。試行錯誤を繰り返した結果、土(粘土)づくりから自分達で行う方法を取ったところ、1年かけて種から芽が出て、両葉が出るまでに3年、大きくなって花が咲くまでに5年かかりながらも成長した。関根さんは、「大きく成長した時は本当にうれしかった」という。現在でも同じ方法を使ってヤマユリを育てている。また、このヤマユリは、遊歩道の脇に植えられていて、散歩をしている人達にもとても好評だそうだ。
苗木を育てるためのヤマユリの種をとる

小学生との山林作業体験学習

 つつじを植え戻す会では、自分達のためだけではなく、子どもや地域に住んでいる人にも森の大切さを知ってもらうための活動を行っており、近隣の小学校の校長先生に「子どもたちに森の大切さを教えてもらえないか?」と頼まれて始めたのが山林作業体験学習である。この活動は、年に2回、小学6年生を対象として行われており、普段行っている森の管理の様子を見学してもらいながら一緒に作業をしたり、近くにある沢を歩き自然観察をしたりしている。また、参加した生徒に、間伐した木を輪切りにしたコースターのお土産を家に持ち帰ってもらい、生徒の親にも活動や森の重要性を伝えてもらっているそうだ。会員の坂上さんは、「この体験学習をきっかけに親子で通常の活動にも参加してもらえればうれしい」という。この体験学習は、自然と触れ合う機会や作業道具を触った経験が少ない現代の子どもにとって、とても刺激的で自然や森の大切さを知るよい機会になっているそうだ。
 つつじを植え戻す会は、高齢化が進んでいる。今後は、活動を続けていくためにも積極的に若い人の力を取り入れ、みんなで里山をつくっていきたいと考えているそうだ。
活動に参加して-執筆担当:上出 櫻子(国際基督教大学教養学部) つつじを植え戻す会の皆さんはとても気さくでやさしい人が多い。取材を受けてくださった時も、緊張して、言葉足らずになっている私に対して場を和ませたり、丁寧に説明したりしていただきとても感謝している。
 つつじを植え戻す会では、古くなって立ち枯れしたアカマツをチェーンソーで切り倒す間伐作業の見学と、活動拠点に多く生えている笹を鎌で刈る下草刈りを活動体験した。私は、間伐を実際に見るのは初めてで楽しみにしていた。最初に行われた間伐作業は会員のみなさんのチームプレーによりきれいに倒すことができ、アカマツが倒れた瞬間すごい振動が地面から伝わり予想を超える迫力だった。私たちが次に参加したのは下草刈りだ。下草刈りでは、鎌を使って笹を刈る作業をした。一緒に活動参加したペアの学生レポーターは鎌を使うのは初めてで、私自身も鎌に触るのは小学生ぶりでうまくできるか不安だったが、会員の方の丁寧な指導によって何とか作業をこなすことができた。下草刈りは、足腰にくる作業であることは知っていたが、私は短時間作業をしただけでも足腰が痛くなり少し休憩がてら周りを見回すと、慣れた手つきでテキパキと作業を続けている会員さんが多くびっくりしてしまった。その後は、私も負けまいと作業に励んだ。
 つつじを植え戻す会の取材と活動を通して、私も会員の方と同じ年齢になったときに会員の方のように自然に関わる活動をしながら生き生きとしていたいと思った。
活動場所で取材をするレポーター