企業CSR・社会貢献活動

花王株式会社

花王は、「よきモノづくり」を通じて、豊かな生活文化の実現に貢献できることを使命としています。"よきモノ"をお届けする事業活動とともに、よき企業市民として、社会に貢献することを目的に社会貢献活動に取組んでいます。

橘山(田口町)憩いの森愛護会

群馬県前橋市田口町。JR前橋駅を出て、車で国道17号を20分ほど走ると、住宅地に囲まれた橘山(たちばなやま)が見えてくる。春になれば自生のヤマザクラが咲き乱れ、きれいなピンク色に彩られる。橘山は、人の手が加わっていないアラカシなどの木々も残り、標高228mの頂上からは市が一望できる山である。そんな橘山で活動する「橘山(田口町)憩いの森愛護会」(以下「愛護会」)の会長・石川欽也(いしかわきんや)さんと会員のみなさんにお話を伺った。

「地域の人々の憩いの山を再び」

 「昔は、みんな橘山でよく遊んだんですよ。」と石川さんは話す。愛護会を立ち上げた2006年当初は、橘山は手入れが行き届かず竹などが鬱蒼と生い茂り、気軽に山に立ち寄れる状態ではなくなってしまっていた。そこで、まず県と市の協同で枯れたマツの木を伐採してもらい、そこから愛護会が整備活動を引き継いだ。「荒れ果てた橘山を昔のような山に再生しよう」を合言葉に、会員一丸となって荒れた山に入り、道を阻む竹や枯れ木の伐採と、草刈りから始めた。その後も活動を続け、今年で活動8 年目を迎えた現在の山を見れば、今までの地道な活動が着実に実を結んでいることがわかる。活動の目的は、橘山を地域の人々に身近な場所にすること。団体名には初代会長の稲葉信雄さんと副会長の塩原禎二さんが「憩い」という文字を入れた。愛護会が心を一つにして取り組む普段の一つ一つの活動が大きな1つの目的に繋がっていると石川さんは話す。子どもから高齢者まで、あらゆる世代の住民が、橘山で自然に触れ合って生活する日々を目指して活動を続けている。
山道は整備され、散策できるようになっている。

「会員がほぼ毎回参加できる活動に」

 人が集まる橘山の環境を保つために、愛護会では冬以外は毎月草刈りを行っている。会員は70代が中心で、活動日には30人の会員ほとんど全員が集まる。活動はその日の作業内容を輪になってみんなで確認してから取り掛かる。草刈りの作業では、男性は草刈り機を使い、女性は鎌を使って草刈り機では刈ることのできない部分を一ヶ所ずつ丁寧に刈っていく。夏場は草がすぐに生えてしまうので、汗が噴き出すほどの暑さの中でも活動休むことができない。また、草刈り以外にも、愛護会が整備する山道に台風で倒れ込んだ大木の撤去など、山の整備活動には様々な作業が必要だ。
 愛護会の会員は橘山のまわりに住んでいる人がほとんどだ。石川さんは、会員も継続的に橘山に集まり、毎回気軽に活動に参加できるよう心がけている。作業の合間の休憩には、ブルーシートを広げて、会員の畑で採れた柿をみんなで分け合いながら、おしゃべりを楽しむ。天気、それぞれの孫、家庭で育てている野菜に至るまで 話題は様々だ。山の手入れと会員同士の交流を大切にしながら、活動を楽しんでいる。
活動開始前に円になって集合・打ち合わせをしているところ。

「さらに色々な人にとって身近な橘山へ」

 会員以外にも橘山に来てほしいという思いから、地元の中学1年生と一緒に活動を行っている。毎年、課外授業として約200人の中学生が参加する。会員が草刈りや、鳥の巣箱の掃除の仕方などを教えることを通じて、次の世代に豊かな自然を守る大切さを伝えている。生徒たちの感想には、「田口町に住んでいたのに、橘山に豊かな自然があることを初めて知った」、「これからも橘山の自然を守りたいと思った」など、彼らがこのプログラムをきっかけに橘山に関心を持ち、大事にする気持ちが芽生えていることが分かる。このように地元の自然に親しんだ経験が、ふるさとそのものを愛する心へとつながることも愛護会は期待している。
 また、橘山がある地域は風致地区(注)に指定されている。風致地区内における環境保全活動としても評価されたことをきっかけに、愛護会の活動意義を改めて感じているという。橘山の環境を守る愛護会の活動は、田口町の自然を守り、自然が身近な暮らしを地域と次世代に残していく活動である。
 愛護会の目標を尋ねると、「人が集まる橘山をさらに目指していくために、オリジナリティのある活動をしていきたい」と、石川さん。例えば、田口町発祥でアブラナの一種である「田口菜」を2009年から橘山で栽培している。田口菜は明治天皇にも献上されたと言い伝えのある野菜で、春先にかけて黄色のきれいな花が咲き人々の目と舌を楽しませてくれる。オリジナリティのある活動を展開しながら、愛護会は、橘山が一層人々に親しまれる「憩いの森」になることを願って活動を続けている。

(注)風致地区とは、自然的環境をできるだけ保全し、良好な居住環境を維持するため、建築物の高さや色彩など一定の行為について条例により制限がある地域のこと。
活動に参加して−執筆担当:細川 真理絵(東京学芸大学) 橘山は、愛護会の団体名にある「憩いの森」という表現がとてもよく似合う。9月の下旬、平日の暑い日にも関わらず30名以上の会員の方が参加し、一緒に草刈り作業をして強く思った。山で採れる毬付き栗やワラビを発見すると、童心に戻ったように心が躍る。日常生活では使い慣れない鎌での作業であったが、会員の方が丁寧に教えてくれたので、刈った後きれいになった地面をみて達成感を味わうことができた。
 山の自然はとても豊かで、木々の緑も目に優しい。空気はおもわず深呼吸したくなるほど澄みきっていた。山に入れば、住宅街にあるということを忘れさせるほど、心地よい空間が広がっており、少し散策するだけで、安らぎをもたらしてくれた。楽しそうに話しながら橘山に集ってくる会員のみなさんの表情がとても明るく、山の自然がすばらしいことと同じくらい、会員のみなさんがすばらしいのだと思った。豊かな自然としての「憩い」と、人と人が集まる心の拠り所としての「憩い」という2つの意味での「憩いの森」だと感じた。
 愛護会の会員の方と同じくらいの歳になった時、私は何をしているだろうか。仲間と一緒に汗を流して、自然の中で楽しく活動したり、話をしたりしていたい、と思う。
会長の石川さんに公民館でお話しを伺う